SILMO2022
そろそろ行かねばと久しぶりにフランスの眼鏡展示会シルモへ。乗客がほとんどいないので出国手続きも早く、時間を持て余して出発まで本を読んだり、たまにヘソの周りを触ってみたりして過ごす。
うとうとする内にフランスに到着する。パリの街では誰もマスクをしていない。私は周りの様子を伺いながらビクビクと鼻だけをマスクから出して、それからしばらくして思い切ってマスクを外す。が、「ボジュール」、「ムッシュー」という声が鼻先へふわふわ漂ってくると俄に心細くなって、大丈夫だろうね、まさか死ぬんじゃなかろうね、と息を止めて歩く内に頭がぼんやりする。
ホテルに着くとワインを飲んで早々に就寝する。
会場へ入るとわんわんと騒がしい音がして、ああ展示会はこんな感じだったなと嬉しくなる。
会場をウロウロしてNoegoの丸眼鏡をオーダーしたり
ラフォンの新作生地の美しさに嬉しくなったりする。
ディスプレイされていた痺れるサングラスに惹かれ、テオのブースに立ち寄る。
「昔から袖振り合うも多生の縁と言うよね。モンスターの滑稽なディスプレイがあるから、その前でちょっと肩を組んで記念撮影でも撮ってこまそう」とオーダーを取ってくれた髭の男が言うので、二人でカメラの前に立つ。しかしその背中は広く、伸ばしても伸ばしても手は肩に届かない。それでも頑張って伸ばし、ようやくここかと、力と親愛の情を込めて手をガシッと置くと、肩がタプタプと柔らかく波打った。オホッと一瞬、相手がたじろぐ振動が伝わってきた。どうやら脇腹であったらしい。が、深くめり込んだ手はもうどうにも出来ない。シャッターの音がする。
なんだか気まずい思いがした。次に巨漢と記念撮影をする時には、背中に手を置くことにしようと手を置く練習をしながら、また会場をウロウロして夕方にホテルに戻る。
目覚めてクロワッサンを食べたら、また会場へ行く。毎日その繰り返し。
日が暮れるまで行ったり来たいする。マサヒロマルヤマの新作がシルモドールという歴史ある賞の一つを取ったことを聞く。
ブースに立ち寄り、噂のモデルやその他の新作をオーダーする。
ホテルのベットに横になり、もう隅から隅まで見たから今年のシルモはもう終わりにして、明日はどこぞかを漫ろ歩きしようと考えていたのに目覚めるとクロワッサンを食べて、また展示会に足を運んでしまう。
甦ったイタリアの老舗ファクトリーのつやつやとした逸品に出会う。1938年創業だという。ファシスト政権下のイタリア、ムッソリーニの時代ですな。展示会の最後の方には思わぬ出会いが待っている事が多い。そしてまたこの度も、と嬉しくなる。
帰途につく。飛行機の中ではぐったりとして、帰ったらまずうどんだと思いつつ、うどんの美点を数えてみたりして過ごす。しかし家に帰り着いてシャワーを浴びると、淡泊なうどんよりも激しいものが欲しくなる。そういえば帰りの機内食は食べなかった。お腹はペコペコなのである。で、うどん屋へ走って行って牛丼を食べました。
以上、眼鏡情報に乏しい展示会報告でした。
クリタケ